小林創と録音について 山本太郎 小林創さんの最大の特技は何かというと美味しそうに食べるという事だ。 本当に幸せそうに食べるのを見るとドンドン沢山食べてもらいたくなる。 うれしそうに食べてるのを見るとこちらまで幸せにになってきてしまうものだ。 そして彼のピアノの演奏も同様である。本当に楽しそうにピアノを弾くので共演者もお客さんも演奏を聴いてると気が付くと楽しい気分になっている。 このアルバムで、その気分を味わえる。 このアルバムの演奏内容で是非聴いて頂きたいのが小林創さんの人格の表れている優しいタッチコントロールである。 豪快な迫力ある演奏は有名で世界レベルの演奏であることは言うまでもないが、彼がいつも研究してるのは、 ピアノのハンマーが弦を触れるか触れないか、或いは弦を舐めるような、繊細なタッチや正確なコントロールである。 その難しさや醍醐味を熱心に話してくれる。私はいつも演奏で共演させて頂くことが多いが今回は録音担当で、 彼の良さを引きだした最高のクオリティーの(これ以上の録音があれば是非教えてもらいたいと言えるほど) ピアノソロ録音を出来たと自信を持って言えるアルバムである。YPM特有の技術もあるのでシークレットのも部分もあるが、 今回もDSD録音を行った。最近DSDレコーダーが普及しているが、 それぞれの機材の欠点や長所が異なりそれを理解して他の機材や技術で補いながら使用しないと最終的に良い作品は出来ない。 マスタリングにはルビジウムのクロックマスターを使用。「みのーれ」という茨城県のホールを使用して、 ハンブルグ・スタインウェイフルコンサートグランドピアノを使用した。毎度のことだが須藤崇さんに調律して頂いた。 私も調律師であるが同業者が聴いても今回の調律は特に素晴らしかった。今回特に勉強になったのがピアノの置き場所に関してで、 ステージ上で10センチ違うと音の響き方が大きく異なる。反響板との距離もさることながらステージ下の梁の位置が大きく関係している。 また湿気や気温によっても音質が大きく変化する。湿気が60%の時と70%の時では音もピアノのタッチも天と地ほどの違いがある。 細かいかもしれないが最高の録音をするには、そこまでの知識が必須でそれをコントロールしなければならない。 このアルバムをからピアノ本来の音や響き、うなりの広がり、迫力、楽しい音、悲しい音、優しい音を小林創の世界でたっぷりたっぷりご賞味頂きたい。